数学入門: 第7章フィードバック

「ライブ講義 大学1年生のための数学入門」を使った学生・読者の反応と, それに対する著者からのフィードバックです。

ラジアンと$\pi$は関係ない

以下の問題を考えてみましょう:

半径$r=$2 cmの扇形があります。頂角は$\theta=0.5$ラジアンです。弧の長さは?

答は, \[r \theta = 2\text{ cm}\times 0.5 = 1.0\text{ cm}\] です。とてもシンプルですね。これは, そもそも弧度法の定義に戻れば

ラジアンとは半径1の扇形の弧の長さ(で角を表すアイデア)

だからです。半径が$r$のときの弧の長さは, 相似形を考えてラジアンを$r$倍すればよいのです。 ところが, ラジアンを

360度が2$\pi$ラジアン

というように理解(記憶)していると, この問題は一気に面倒くさくなります。まず0.5ラジアンを度に直し, それを360度で割ることで全円のうちの割合を求め, それに全円の円周長をかける。つまり, \[\frac{\theta\times 360}{2\pi}\times\frac{1}{360}\times 2\pi r\] と計算するのです(そして結局これは上の式、つまり$r\theta$に一致します)。
「360度が2$\pi$ラジアン」と「理解」している人は多いです。そのような人は, ラジアンといえば必ず$\pi$が出てくるものと思っているようです。入試などで出てくる角は$\pi/3$や$\pi/4$のような「有名角」が多いので, そのような「理解」でも不都合は無く, むしろ便利なのでしょう。しかし本来はラジアンと$\pi$は(定義のレベルでは)関係ないのです。そして実際に三角関数を研究や実務で使うときは, 「ラジアンとは半径1の扇形の弧の長さ」という理解(定義)の方がシンプルに有用なのです。

学生のリアクションペーパーから

  • 「ラジアンはπがつく」というイメージは、受験慣れによって有名角のイメージが強くなりすぎた影響だと言われて、ハッとなった。/ 自分は未だにラジアンとπを結びつけてしまう癖がある。ラジアンとは半径1の孤の長さの事だ。イメージではなく、定義で理解できるようにしたい。 

    ... むしろ「弧の長さ」は「π」よりもイメージしやすくないですか? 皆さんのよくいうイメージとはどういうものなのでしょうか?

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