言ってないことを読み取ってはいけない

(勉強の仕方全般に関する話題です。) 

どの分野もそうだと思いますが, 特に数学・物理学関係の分野の学びでは, 論理的な読解力が大変重要です。それが無いと書かれたこと・語られていることを正確に把握できず, 誤解や拡大解釈によって学びの効率が著しく落ちます。まるで「穴の空いたバケツで水を汲む」ようなもので, 膨大な時間をかけて一生懸命勉強してもなかなか勉強できるようにならないのです。逆に言えば, 論理的な読解力を身につければ, 学びの効率は劇的に向上し, 人生が変わるかもしれません!!!

「論理的な読解力」の最初のレッスンとして, 発言を素直に受け取ること, とりわけ,

「著者が言ってないこと(話題にしていないこと)を勝手に読み取らない」

という教訓を身につけましょう。例えば「サッカーって面白いよね」という人に対して「この人には野球はつまらないんだ」というような解釈を勝手にしない, ということです。当然ながらサッカーが面白い, 野球も面白い, という人はたくさんいます。「サッカーは面白い」という発言ではサッカーだけが話題になっているのであり, 野球はとりあえず話題になっていないのです。

当たり前のようですが, 実はこれができない人は多いのです。

たとえば「2つの整数m, nのうち片方は偶数です」と言われたとき, 「じゃあもう片方は奇数なんだな」と考えてしまう人がいます。これは間違いです。もう片方は話題になっていないから何でもよいのです(ただし話の前提条件になっていた「整数」は満たす必要があります)。だからもう片方は奇数でも偶数でもよいのです。

「AならBです」と言われたときを考えましょう(A, Bは何らかの条件, たとえばAは「xは偶数」でBは「xは整数」)。これを「じゃあAでないならBでないんだな」と受け取ってしまう人がいます。これも上の教訓に反します。「AならBです」という発言は, 「Aでない場合」には言及していません。話題になっていないのです。だから「Aでない場合」については考えなくてよいのです(考えてもよいのですが, それはあくまであなたの考えであって, 著者の考えではありません)。だから「AでないならBでない」と解釈してはダメですし, 「AでないのにBなこともありますよ!」みたいな「反論」も成立しないのです。

「AならBです」と言われて, 「そうか, BなのはAのときなんだな」と思ってしまう人がいます。これも間違いです。「BなのはAのとき」というのは「BならばA」と同じであり(わかりますか?), これは「AでないならBでない」と同じです(対偶というやつです)。つまり上の話と同じになり, 間違いです。だから「BなのにAでないこともありますよ!」みたいな「反論」も成立しないのです。

この「言ってないことを勝手に解釈する」癖のせいで数学がわからない人がいませんか? 数学は正しい・確実なことの丁寧な確認と積み重ねが大事ですので, その中に正しいかどうか確定していないことを紛れ込ませてしまう癖があると厳しいです。著者が言っていないこと(話題になっていないこと)をあたかも言っているかのうように解釈し, 「この著者の言ってることはわからない, 腑に落ちない...」と延々と考え悩み続けることになったりしたら大変な損失です。

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